れおは、かけがえのない愛犬コーギーでした。彼はただ可愛いだけでなく、まるで人間の心理を理解しているかのような、天才的な一面を持ち合わせていました。特に、ボール遊びをするときに見せる彼の知能プレーは、今でも鮮明に記憶に残っています。
れおとの追いかけっこ:絶妙な難易度設定
れおはよく、ボールをくわえて「捕まえてみろ!」と私を挑発してきました。私が「待て待て~」と言いながら追いかけると、彼はまるで計算されたかのように、その時の状況に合わせてスピードを調整するのです。
例えば、私が足を痛めている時には、それでも追いかけられるくらいの優しいスピードで走ります。一方、広大な公園で思いっきり走れる状況では、私がぎりぎり追い付けないくらいのスピードまで上げて、逃げ切ろうとするのです。
その絶妙な駆け引きは、まさに芸術的でした。すぐに捕まってしまえば面白くないし、かといって全く捕まえられなければ、私はすぐに飽きてしまうでしょう。れおは、その微妙な距離感をコントロールすることで、私を夢中にさせていたのです。
れおが教えてくれたこと:適度な難易度の重要性
れおとの追いかけっこを通じて、私はあることに気づきました。それは、人間が課題に取り組む際に、最も熱意を持って取り組めるのは、適度な難易度の課題であるということです。
難易度が高すぎれば、最初から諦めてしまい、取り組む気力すら湧いてきません。逆に、簡単すぎる課題は、退屈でつまらないため、真剣に取り組むことができません。
れおとの遊びの中で、彼は無意識のうちに、私にとって最適な難易度の課題を提供してくれていたのです。
心理学の大家も認めた「フロー体験」
れおが死んでから14年が経ちましたが、彼の教えが確かなものであると確信したのは、4年前に心理学者のミハイ・チクセントミハイ氏の著書「フロー体験 喜びの現象学」を読んだ時でした。
チクセントミハイ氏は、人が何かに夢中になっている状態を「フロー体験」と名付け、その状態こそが幸福を感じるための重要な要素であると説いています。そして、人がフロー体験を得るためには、課題の難易度が適度であることが重要な条件の一つであると述べています。
まさに、れおが私にやっていたことは、フロー体験を得るための戦略そのものだったのです。彼は、愛犬としての本能だけでなく、まるで人間の心理を理解しているかのように、私を夢中にさせる環境を作り出していたのです。
具体例:仕事における適度な難易度設定
この「適度な難易度設定」は、仕事においても非常に重要です。例えば、プロジェクトリーダーとしてチームを率いる場合、メンバー一人ひとりのスキルや経験に合わせたタスクを割り当てる必要があります。
- 経験豊富なメンバーには、少し挑戦的な、現状のスキルを少しだけ上回るような難易度の高いタスクを任せることで、成長の機会を与え、モチベーションを高めることができます。
- 経験の浅いメンバーには、基礎的なスキルを磨くことができる、比較的難易度の低いタスクから始めて、徐々にステップアップしていくように促すことで、自信をつけさせ、成長をサポートすることができます。
このように、メンバーの能力に合わせてタスクの難易度を調整することで、チーム全体のパフォーマンスを最大限に引き出すことができるのです。
具体例:学習における適度な難易度設定
学習においても、適度な難易度設定は非常に重要です。例えば、新しい言語を学ぶ場合、最初から難しい文法や単語を詰め込むのではなく、まずは基本的な単語やフレーズから始めるのが効果的です。
簡単な会話ができるようになったら、少しずつ難しい文法や単語を学び、徐々にレベルアップしていくことで、飽きることなく学習を続けることができます。また、自分のレベルに合った教材を選ぶことも重要です。
難しすぎる教材は挫折の原因になりますし、簡単すぎる教材は退屈で学習効果が薄れてしまいます。自分のレベルに合った教材を選び、適度な難易度の課題に挑戦することで、効率的に学習を進めることができます。
具体例:趣味における適度な難易度設定
趣味においても、適度な難易度設定は重要です。例えば、絵を描くのが好きな人が、いきなり写実的な絵を描こうとしても、なかなかうまくいかず、挫折してしまうかもしれません。
まずは、簡単なイラストや模様を描くことから始め、徐々にステップアップしていくことで、楽しみながらスキルを向上させることができます。また、自分の好きなテーマやモチーフを選ぶことも重要です。
自分が興味のあるテーマであれば、多少難易度が高くても、楽しみながら取り組むことができます。趣味を通じて、適度な難易度の課題に挑戦することで、スキルアップだけでなく、達成感や充実感を得ることができます。
れおは偉大な教師だった
れおは、心理学の大家ではありません。ただの可愛いコーギー犬でした。しかし、彼は一生をかけて、私に幸福になるための近道を教えてくれました。それは、「適度な難易度の課題に挑戦すること」です。
この教えは、仕事、学習、趣味など、人生のあらゆる場面で役立ちます。難易度が高すぎず、簡単すぎない、自分にとって最適な課題を見つけ、それに夢中になることこそが、幸福への第一歩なのです。
れおは、言葉を話すことはできませんでしたが、その賢さと愛情を通じて、私に大切なことを教えてくれました。彼は、私にとって最高の先生であり、最高の友人でした。今でも、彼のことを思い出すと、感謝の気持ちでいっぱいになります。
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