料理上手な友人、お菓子作りは別腹？バレンタインの苦闘秘話

私の友人A子は、誰が見ても料理上手と認める女性です。和食、洋食、中華、エスニック…ジャンルを問わず、彼女の手にかかればたちまち本格的な一品に変わります。ホームパーティーを開けば、その腕前を披露するチャンスとばかりに、ゲストを唸らせるような料理を次々と作り出すのです。私も何度もご相伴にあずかっていますが、その味はレストランに匹敵すると言っても過言ではありません。

料理は得意でも、お菓子作りは苦手？

しかし、そんなA子にも苦手な分野があるのです。それが、お菓子作り。意外に思うかもしれませんが、彼女曰く「料理は理論に基づいて組み立てられるけど、お菓子は繊細なバランスが重要で、その感覚が掴めない」とのこと。確かに、料理は塩加減やスパイスの調整で多少の誤差はカバーできますが、お菓子はほんの少しの配合の違いが、出来上がりに大きく影響します。

彼女は、過去に何度かお菓子作りに挑戦したことがあるそうですが、納得のいくものができたことはほとんどないそうです。クッキーは焦げたり、ケーキは膨らまなかったり、マカロンは表面がひび割れたり…。その度に、レシピ本やネットの情報を読み漁り、原因を究明しようとするのですが、なかなか解決策が見つからないと言います。

バレンタインのチョコレート作りに挑戦！

そんなA子が、バレンタインのチョコレート作りに挑戦することになったのは、恋人のB君のためでした。普段からA子の手料理を絶賛しているB君に、手作りのチョコレートをプレゼントしたいと考えたのです。しかし、お菓子作りが苦手なA子にとって、これは大きな挑戦でした。

彼女は、まずチョコレートの種類選びから始めました。生チョコ、トリュフ、ブラウニー…様々な種類がある中で、彼女が選んだのは、シンプルなガトーショコラでした。比較的簡単そうに見えたことと、B君がチョコレートケーキが好きだったことが理由です。

完璧を求めるあまり…苦労の連続

レシピ本を参考に、材料を揃え、いざ調理開始。しかし、そこからが苦労の連続でした。チョコレートを湯煎で溶かす際、温度が高すぎて焦がしてしまったり、卵白を泡立てる際に、うまく角が立たなかったり…。小さなミスが積み重なり、なかなかレシピ通りに事が進みません。

特に苦労したのは、焼き加減でした。レシピには「オーブンで〇分焼く」と書かれているものの、A子の家のオーブンは古い型のため、温度調節がうまくいきません。何度もオーブンの前で焼き具合を確認し、竹串を刺して焼き加減を確かめるのですが、なかなか理想的な状態になりません。

何度も失敗を重ねて…

結局、A子はガトーショコラを何度も作り直すことになりました。材料費もかさみ、時間もどんどん過ぎていきます。深夜になってもチョコレート作りが終わらず、途中で何度も諦めそうになったそうです。

しかし、彼女は諦めませんでした。「B君を喜ばせたい」という強い気持ちが、彼女を支えていたのです。失敗する度に原因を分析し、改善策を考え、再び挑戦する。その繰り返しでした。

バレンタイン当日…感動の結末

そして、バレンタイン当日。A子は、ようやく完成したガトーショコラをB君にプレゼントしました。見た目は少し不格好でしたが、B君は満面の笑みで受け取ってくれました。

B君がガトーショコラを一口食べると、さらに笑顔がこぼれました。「すごく美味しい！ A子が作ってくれたんだね。本当に嬉しいよ！」と、感激した様子で言ってくれたそうです。

完璧でなくても、気持ちが伝わる

A子は、B君の喜ぶ姿を見て、涙がこぼれそうになったと言います。完璧な出来栄えではなかったけれど、B君にはA子の気持ちが伝わったのです。

A子は、今回のチョコレート作りを通して、お菓子作りの難しさを改めて実感するとともに、完璧であることよりも、相手を想う気持ちが大切であることを学びました。

周囲の事例から見る「想い」の重要性

A子のような経験は、決して珍しいものではありません。バレンタインのチョコレート作りで苦労したという話は、周囲でもよく耳にします。

例えば、私の職場の同僚Cさんは、毎年手作りのトリュフを会社の人たちに配っています。しかし、彼女も最初から上手だったわけではありません。最初は、チョコレートが分離したり、形が崩れたり、失敗続きだったそうです。

それでも、彼女は諦めずに毎年トリュフを作り続けました。そして、数年後には、プロ顔負けの美しいトリュフを作れるようになったのです。彼女は「失敗しても、気持ちを込めて作れば、きっと伝わる」と言っていました。

また、私の妹Dは、料理が得意ではありません。しかし、毎年バレンタインには、手作りのクッキーを好きな人にプレゼントしています。Dのクッキーは、焦げている部分があったり、形が歪だったりしますが、それでも、もらった人は皆喜んでくれます。なぜなら、Dのクッキーには、彼女の愛情がたっぷり詰まっているからです。

これらの事例からわかるように、バレンタインのチョコレート作りは、単なるお菓子作りではありません。それは、相手を想う気持ちを形にするための手段なのです。完璧なチョコレートを作ることができなくても、心を込めて作れば、必ず相手に気持ちは伝わります。