近年、ギャンブル依存症に関する報道が活発化しています。依存症は、単なる個人の意志の問題ではなく、脳の機能に影響を与える病気として認識されるようになってきました。しかし、その一方で、日本国内ではIR(統合型リゾート)誘致政策が進められています。この矛盾は、一体何を意味するのでしょうか。
深刻化するギャンブル依存症:個人の苦悩、家族の崩壊、そして社会問題へ
報道番組では、ギャンブル依存症に苦しむ人々の声が紹介されました。
- 大学生時代の挫折から依存へ: 大学生活に馴染めなかった男性は、ゲームセンターでの発散からギャンブルへと移行し、借金を重ね、ついには大学を中退しました。
- コロナ禍でオンラインギャンブルへ: 新型コロナウイルスの感染拡大を機に、パチンコ店からオンラインギャンブルに移行し、依存を深めた人もいます。時間的な制限がなく、手軽に賭けられるオンラインギャンブルは、依存症を悪化させる要因となりえます。
- 闇金からの借金、そして犯罪へ: ギャンブルで負債を抱えた男性は、闇金から借金をするようになり、ついには職場の金を横領してしまいました。
- 家族の苦悩: ギャンブル依存症の長男を持つ母親は、500万円もの借金を肩代わりしましたが、すぐに新たな借金が発覚しました。息子は家族の金にも手をつけ、家庭は崩壊寸前に追い込まれました。
- 闇バイト、そして強盗殺人未遂事件へ: ギャンブルで作った借金を返済するために、SNSで集められたグループが強盗殺人未遂事件を起こしました。
これらの事例は、ギャンブル依存症が個人の人生を破壊するだけでなく、家族、そして社会全体に深刻な影響を与えることを示しています。
IR誘致政策の矛盾:経済効果の陰に隠されたリスク
ギャンブル依存症の深刻な現状が明らかになる一方で、政府はIR誘致を推進しています。IRは、カジノだけでなく、ホテル、ショッピングモール、エンターテイメント施設などを複合的に組み合わせた大規模なリゾート施設です。政府はIR誘致によって、経済効果や観光客の増加を期待しています。
しかし、IR誘致はギャンブル依存症問題を悪化させるリスクがあります。カジノが身近になることで、ギャンブル依存症になる人が増加する可能性は否定できません。また、IR周辺の治安悪化や、ギャンブル依存症による医療費の増大など、社会保障費の増大も懸念されます。
IR誘致は誰のための政策なのか?:国民の精神的健康を蔑ろにする一部の利益
IR誘致によって、一部の企業や投資家は莫大な利益を得る可能性があります。しかし、その利益のために、国民の多くの精神的健康が蔑ろにされているのではないでしょうか。ギャンブル依存症対策を十分に講じないままIRを誘致することは、国民の幸福を犠牲にして、一部の利権を優先する行為と言えるかもしれません。
必要なのは、今だけ金だけ自分だけの政策からの脱却
ギャンブル依存症問題とIR誘致政策の矛盾は、今の日本社会が抱える問題の縮図とも言えます。目先の経済効果や一部の利益を優先するあまり、社会全体の幸福や将来への責任をないがしろにする。そのような政策は、長期的には社会の安定を損ない、結局は利権を吸い上げている人間たちの首を絞めることになるでしょう。
今必要なのは、今だけ金だけ自分だけの政策からの脱却です。ギャンブル依存症対策を強化し、国民の精神的健康を守りながら、持続可能な社会を築いていく。そのような視点に立った政策こそが、真に国民のためになるのではないでしょうか。
私たちができること:偏見をなくし、支援の輪を広げる
ギャンブル依存症は、誰でもなる可能性のある病気です。依存症に苦しむ人を非難したり、自己責任だと切り捨てるのではなく、病気として理解し、適切な支援を提供することが重要です。
番組では、ギャンブル依存症の当事者グループや家族会が紹介されました。これらの団体は、依存症に苦しむ人やその家族にとって、貴重な支えとなっています。また、依存症専門の病院や精神保健福祉センターなど、相談できる窓口も存在します。
私たち一人ひとりがギャンブル依存症に対する正しい知識を持ち、偏見をなくし、支援の輪を広げていくことが、問題を解決するための第一歩となるでしょう。
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